◆現行制度の対象はBEVやPHEVのみ
まずは、補助金の制度をもう一度おさらいしておきましょう。対象となるクルマや、補助金の金額等、よく調べないと実際にわからないことが多い制度です。自分の狙っているクルマはどのくらい補助金が受けられるのか、最初に確認しておきましょう。

そもそもこのCEV補助金の制度は、新しいパワートレインのクルマを普及させるためのもの。BEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)などの電動車を対象に、国が購入のための補助金を援助するというものです。注意したいのは、エコカーといえど通常のHEV(ハイブリッド車)やクリーンディーゼル車は対象ではない点。これらはすでに普及が進んだこともあり、補助金が受けられません。

対して補助金対象の電動車は普及台数が少なく、ICE(内燃機関)車に比べ車両本体価格が高価になりがち。そこを国が補いますよという制度なのです。
◆国産車勢とテスラのみが満額近い援助
さて、気になる増額分ですが、26年3月現在ではBEVとPHEVの増額が発表されています。FCEVは、4月に改めて改訂されるようですので、新しい情報を待ちましょう。

まずBEVでは、最大で40万円の増額が適用されます。25年までの補助金は最大で90万円まででしたが、これが130万円にまで増えています。もちろん車種は限られていますが、国産車を中心に満額に近い対象車がそろっている状況。国産BEVで気になるモデルがある人は、最高のチャンス到来かもしれません。
【航続距離500kmオーバー!】“ちょうどイイ”スズキ最新BEV「eビターラ」の完成度の高さに驚いた!
輸入車のBEVも多く販売されていますが、今回の増額の恩恵を満額近い金額で受けられたブランドは、どうやら「テスラ」のみだったようです。テスラのモデル3とモデルYに関しては、国産勢とほぼ同じ127万円の補助金が受けられます。テスラは昨年、車両本体価格を値下げし販売台数を伸ばしている最中のこの追い風。購入を検討している人にとっては、またとない好機が訪れています。

しかし、疑問が残るのはテスラ以外の輸入車になぜ増額の対象車が少ないのかという点。それには、大きく2つの理由がありました。
◆少々闇深い補助金制度の背景

そもそも今回の増額が決まった理由というのが、アメリカとの関税交渉の合意から。これがひとつ目の理由です。昨年からトランプ関税と呼ばれる大幅な関税の増額が実施され、日本をはじめ世界中の国の政府がアメリカ政府と交渉をしてきました。その交渉のなかで、アメリカ側が日本のCEV補助金制度に対し「BEVとFCEVの補助金格差が大きすぎる」と指摘したからなのです。

FCEVは、ご存知のとおり日本のトヨタとホンダ、そして韓国のヒョンデしか量産化できていない(乗用車の場合)ので、アメリカ車にとっては恩恵が受けられません。しかし、トランプ政権はアメリカの製品を多く輸出したい考えをもっています。そこで、テスラのようなBEVであればアメリカ車も恩恵が受けられると考えたのでしょう。後述する日本の補助金基準に該当した、テスラ車の販売が促進できるように交渉した結果ともとれます。今回の増額は、これらの貿易交渉がもたらした影響なのです。
また、日本の補助金制度が、クルマ単体だけではなく「クルマとメーカーの取り組み総合評価」を基準に設定されていることも大きく関係しています。これが、輸入車が恩恵を受けにくい理由の二つ目です。

CEV補助金の評価基準は、200点満点の点数制で評価されます。内訳は、車両が100点、企業が100点の半分づつ。車両の評価に関しては、電費性能やサイバーセキュリティ対策など、どのBEVでも平等に評価できる項目が並んでいます。しかし、企業の評価基準はどうしても難しい点が出てきます。

例えば、急速充電器の設置数といった評価基準は、そもそも国産メーカーよりもディーラー店舗数の少ない輸入車勢には厳しいと言わざるを得ません(配点40)。整備拠点数(配点50)や、整備の人材育成(学生に対する奨学金制度の有無など。配点15)といった項目も、海外勢には不利な条件です。満額、もしくはそれに近い額の補助金を受けるのは、輸入車メーカーにとって非常に厳しい現状があります。

◆補助金には限りがあります

しかし、そんな厳しいなかでも、80万円オーバーの補助金を受けられる輸入車もチラホラ見受けられます。昨年までのBEVの満額が90万円だったことを考えれば、かなり大きなプラスだといえるでしょう。選ぶ側からすれば、国産車も輸入車も平等に選びたいところでしょうが、こればっかりは国の政策なので従うしかありません。

いずれにせよ、補助金は総額の上限が決まっていますので基本的に早い者勝ちです。今年の補助金は過去最大級の額なので、早めに打ち切られてしまう可能性は十分に考えられます。この機会にBEVを購入しようと考えている人は、早急に手を打ちましょう。
<文=青山朋弘 写真=日産/トヨタ/MINI/ステランティス/テスラ/日刊自動車新聞>







